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躾について私たちは、それぞれの立場から発言し、自ら積極的に啓蒙しています。

 

バランスのとれた社会感覚は
家庭での「躾」から生まれる。

久米 豊 ●日産自動車株式会社相談役

世の中が変わってきた理由の一つに教育があると思います。かつて経済界でも人材育成が叫ばれ、知識偏重の教育を改め、個性を尊重すべきだと言われ、それなりの改革も見られました。しかし、制度では人は育ちません。基本となる土壌こそ大切で、それは家庭でしか造れないのです。子どもは家庭において家族との在り方を理解し、親の日常を通じて社会感覚を身につけ、その間に「やって良いことと悪いこと」を教えこまれて成長します。昔の人はそれを「躾」と呼びました。昔から伝えられた家庭教育がバランスのとれた社会感覚を育て、それが崩れかけた日本を救ったということを、安定して活気に溢れていた頃の社会が証明しています。
これからは個性と創意だけでなく、正義感と勇気、広い心と豊かな人間愛を備えた若者が、私たちの後を継いでくれることでしょう。

インターネット時代の
「モラル」の在り方。

石田晴久 ●東京大学名誉教授 ●日本インターネット協会会長

高度情報化がさらに発達し、インターネットが普及した社会になると、国境や国籍までもあまり意味をなさない時代になるかもしれません。そうなると世界で共通のモラルを持つ事が必要になってきます。例えば、著作権の問題です。直接オンラインで送られる世界中の新聞や本が自宅で自由に読めるばかりか、プリントアウトも簡単なので、著作権を守ることが難しい状況です。今、私が関係した所では情報化時代のモラルの教育を、中学校教育から始めることを提案しています。
技術家庭の情報基礎という科目で、パソコンの簡単な使用法とともに、ソフトや著作権についても教えようというものです。「人が作ったプログラムをやたらとコピーしてはいけない」とか、「目に見えない情報の価値を尊重しよう」など、中学時代から繰り返し教育していくことが必要でしょう。

アメリカには各州ごとに
「子供を守るための法律」がある。

ナンシー・ウィルソン ●主婦(ロサンゼルス在住)

私の住むロサンゼルスでは、どんな理由があっても子どもを一人にして外出する事は許されません。また、小さい子どもを車に乗せる際には後部座席にベビーシートをつけ、ベルトで止める事が義務づけられています。
先日、フリーウェイで突然泣き出した子どもを助手席の奥さんがだっこしているのをパトロール中の警官に見つけられ、結局250ドルの罰金を払ったという知人の話を聞きました。実際、シカゴの家庭裁判所は、子どもを置いたまま1週間のメキシコ旅行に出掛けたある夫婦に対し、親として子どもを育てる資格も権利もないとみなし、子どもを州の保護下に置きました。この夫婦は親としての自覚を持つためにプログラムを終了し、州の機関にも認められなければ、子どもを引き取る事が許されません。このようなケースは、子どもを守り育てるべき親が、「利己的でわがままな子どものまま親になった」か、「不幸にして基本となる躾を受けてこなかった可哀想な人たち」だと思われます。

「共存共生」の人生観や社会観を
「躾」から。

森下元晴 ●全国林業改良普及協会会長

21世紀まで3年余りです。世界の人口は飛躍的に増え続けており、世紀半ばまでに倍増して100億に達するといわれています。「人口問題と食料問題」がこれからの大命題の一つですが、今日の物質万能の人生観や社会観では、新世紀の難路を突破できそうにありません。今こそ、人種を越え、国境を越えて、自然との共生、人と人との共存の生命文化が求められています。そのためには自然界の法則や掟、また、人間社会が永年かかって造りあげた「道徳」や「躾」の美風を融合した地球生命圏を確立しなければ、地球の未来はありません。

「躾」の第一歩は
「心のゆとり」を持つことから。

萩野靖子 ●主婦

私は常日頃、弱いものを庇う、助けるという事をして初めて社会人ではないかと思っています。近頃は若い人たちが年寄りをまるで汚らしい者のように罵ったり、人より劣った人間をさげすんだりする傾向が強いように思えてなりません。人の存在を無視する風潮、弱い人を助けないことなど、まるで心のない人達が多すぎます。人に優しく接することができるよう、躾の第一歩は心のゆとりを持つことから始めたいものです。

他国文化に触れ、自国を知る。

G・スタントン ●日本躾の会 英国ブロック代表 英国アジア圏コンサルタント(ロンドン在住)

日本で働いていた時に「ふれあい」と出会った。その後スイス、英国と住居は変わったが「ふれあい」は我が家の教育である。躾という字も素晴しいが、躾の奥深さにイギリス人がなくしたものを発見したように思えた。我が家の子ども二人のため日本の躾の良さをどしどし取り入れ早、3年になる。躾がイギリスにおいて日本文化として浸透することを願うのは私だけだろうか。

地球・世界の人々との共生は、
あなたの心得次第です。

エドワルド・デルガード ●キューバ国際交流会合長元駐日キューバ大使(ハバナ在住)

日本に駐日大使として在任中に伊藤会長と出会いそして躾の素晴しきとも出会いました。私は行く先々の歴史を勉強するのが好きですが、この躾の意味と奥深さに感銘を受けた次第です。地球との共生、世界の人々との共生はあなたの心得次第で良くも悪くもなるのです。その原点がここで提唱している「躾」だったのです。素晴しい…!! ハバナの地から応援します。

「躾る」
イコール「叱る」ではない。

市川和雄 ●会社員

若い母親の中には、躾というと子どものわがままを厳しく叱る事と考えている人も少なくないようです。事実、子どもの母親についてのイメージ調査に「僕を叱ってる時のお母さんの顔は、おとぎばなしに出てくる鬼婆みたいだ」と答えた子どもがいたのには少々驚きました。かつて読んだフランスの道徳教科書に載っていた「お母さんの目」という作文にはこんなことが書いてありました。「僕が悪戯をすると、ママの日は悲しそうになります。僕がいい子になるとママの目は嬉しそうに輝きます」と。だから、決して、躾ることは叱ることではないのです。

子供の躾に、
「ふれあい」は欠かせません。

名古屋忠利 ●日本躾の会 仏国ブロック代表 アーティスト(パリ在住)

私のところには愛情を持ち勇ましく育つようにと願いサイと名付けた長男とリラの花が咲き乱れた時に生まれ、いつまでも心身ともに美しくとの願いでリラと名付けた娘の二人の子どもがいる。この二人の子どもを躾るのに役に立っているのが毎月送られてくる「ふれあい」である。
最近の日本人を外国から見ていると実に経済とは反対に軟弱になったものだ。外国に住んでいるから日本がよく見えるのは本当だ。それだけにアジア全体が仲良く良い方向に共生してくれればと願っている。「ふれあい」はその部分も踏まえた年齢に関係なく読める本で毎月届くのが待ち遠しい。

 

 

 

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